牧師の聖書コラム

 

第6回 「感謝と分かち合い」
上林順一郎

 11月3日に行われたアメリカの大統領選挙はバイデン氏の勝利が判明して一カ月近く経ってもトランプ大統領は選挙の不正などを訴えて敗北を認めず、それを支持する人も多く、アメリカは新たな分断と対立の様相を呈しています。
 そのアメリカでは毎年11月の第四木曜日には「収穫感謝祭」が盛大に行われます。この収穫感謝祭はアメリカの建国と深く結びついている行事ですが、イギリス国教会との信仰の対立による迫害から逃れるためにメイフラワー号にのり新大陸を目指した人々(清教徒)は新しい土地を得てそこで荒地を開墾し、秋には初めての収穫を得ます。そのとき彼らは大地の恵みを与えてくださった神への感謝を捧げると同時に開墾から収穫までを指導し、実りをもたらしてくれた先住の人々(ネイティブ)を招き七面鳥を料理して共に食し、収穫の喜びを分かち合ったのでした。
 この出来事の背後には旧約聖書の教えがあります。
「あなたの神、主があなたとあなたの家族に与えられたすべての賜物を、レビ人およびあなたの中に住んでいる寄留者と共に喜びなさい」(申命記26:11)また「穀物を収穫する時は、畑の隅々まで刈り尽してはならない。収穫後の落ち穂を拾い集めてはならない。これらは貧しい者や寄留者のために残しておかねばならない」(レビ記19:9) 有名なミレーの絵「落ち穂拾い」の原型になっている言葉です。
 収穫の恵み対しては神への感謝だけに終わることではなく、収穫の一部を貧しい人や外国の寄留者と分かち合うことが伴っているのです。収穫感謝祭を英語ではThanksgiving Dayと言います。Thanks(感謝)とGiving(与える)とが一緒になっているのです。
 こうしたアメリカの建国時の精神と行動とが今年の「収穫感謝祭」を機に回復されることを祈ります。

2020年11月


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