牧師の聖書コラム

 

第15回 「走れ!神のゴールへ」
上林順一郎

 東京でのオリンピックが終わり、日本の選手がオリンピック史上最大のメダルを獲得したとのことです。アスリートたちの努力と活躍を評価しますが、一方、たった一つのメダルも得ることなく帰国した多くの国があることも事実です。明らかに国力や経済力の差がそのような結果をもたらしているのです。
 日本の選手でもメダルを獲得した選手たちは称賛され、歴史に残るでしょうが、得ることができなかった人たちはすでに忘れられてしまっていることでしょう。スポーツに勝敗はつきものですが、勝敗は時の運とも言います。勝敗が人間の価値の差異や差別の理由になってはならないと思います。
 東北地方のある小学校で毎年クラス対抗の徒競走がありました。クラスの全員が男女に分かれてグランドを一周します。早くゴールした子どもから一番、二番、三番との入賞の番号が付けられます。あるクラスの番になりました。クラスの男子10名余りがスタートしましたが、クラスに体の不自由な子どもがいました。次第に遅れ始め、一番最後を走っています。先頭の子はゴール近くまで到達し、勝負はすでについていました。
 その時、先頭を走っていた子どもはゴールの手前10メートルほどの所で突然止まって足ふみをしだしたのです。その次を走っていた子どももその隣で、そして後に続いた子どもたちも次々と同じところで足ふみをします。最後に遅れてきた子どもがそこに到着しました。すると全員が横になって手をつなぎ、そのままゴールに向かったのです。そして、「せいの~」の大きな掛け声で全員が一緒にゴールを越えたのです。見物していた人たちからは大きな歓声と拍手とが起こりました。神さまの待つゴールがそこにありました。
 間もなくパラリンピックが始まります。パラレルとは「並行する」「一緒に行く」という意味です。パラレルが起こることを期待します。
2021年8月


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