牧師の聖書コラム

 

第31回 「戦」から「和」へ
上林順一郎

  2022年の一年の世相を表す漢字一字が日本漢字検定協会により発表されました。予想通り「戦(せん、たたかい)」でした。
 今年の2月14日、ロシアのウクライナへの侵略による戦争が10か月経ったいまも続き、ロシアの砲撃によって子どもたちを含めた多くのウクライナ市民の命が失われ、またウクライナ各地の建物や施設が破壊されてクリスマスを迎えるこの時期、人々が零下の寒さと困窮の中,死の危機に置かれています。
 「戦」の漢字は「単=盾(たて)」と「伐=矛(ほこ)」という字を組み合わせたもので、古代の戦争に用いられた武器からきています。先日、岸田首相は日本の軍事費を国内総生産(GDP)の2%にアップする方針を打ち出しました。これまでの「専守防衛」という「盾的性格」から、「先制攻撃」を含む「矛」という攻撃的軍事力の増強を意図したものと言えます。ウクライナへのロシアの軍事侵略、中国や北朝鮮などの軍事強化に対応するという理由を掲げていますが、日本の再びの軍国主義への道を進もうとしているのが本心でしょう。
 「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤とし、槍を打ち直して鎌とする。国は国に向かって剣を上げず。もはや戦うことを学ばない」(イザヤ書2:4,5)預言者イザヤの忠告は今日の世界に向かってなされているものです。
クリスマスを迎えます。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、み心に適う人にあれ」(ルカによる福音書2:14)野原に野宿していた羊飼いたちに天使が告げたように、世界が平和であることを祈り、平和のために何ができるのか、考えるべき時です。
 平和の「和」の字は「禾(稲)を共に口にする形」のようです。平和とはなによりも人々が平等に食べ物を共にする姿といえるでしょう。
 「狼は小羊と共に宿り、豹は子山羊とともに伏す。子牛は若獅子と共に育ち、小さな子供がそれらを導く。牛も熊も共に草をはみ、獅子も牛もひとしく干し草をくらう」(イザヤ書11:6,7)これこそ、聖書が告げる平和の姿です。
 来年は「戦」ではなく、「和」が選ばれる一年でありますように。

2022年12月


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