牧師の聖書コラム

 

第45回 「苦難の道行き(ヴィア・ドロローサ)」
上林順一郎

  キリスト教の三大行事(祭り)といえば、クリスマス、イースター(復活祭)、そしてペンテコステ(聖霊降臨日)ですが、それに加えてイースターまでの40日間を「受難節」としてイエス・キリストの十字架に至る苦難を覚える時として過ごします。今年は2月14日から3月30日までの40日間となります。
 カトリック教会ではこの期間を「四旬節(しじゅんせつ)」、聖公会では「大斎節(だいさいせつ)」と呼びますが、この40日間をクリスチャンたちはそれぞれ悔い改め、節制、断食、克己、修練、祈りの日々として送ります。
 たとえば、ある人は自分の好きな食べ物をこの期間は自制するとか、旅行とか観劇などの遊びや趣味を控えてその分災害被災地への支援に送るとか、自分の欲望を抑えて克己(自分を克服)の努力をする人もいます。それはイエス・キリストの十字架への苦難の道に信仰者として加わるという信仰の表現でもあるのです。 今年の「受難節」は2月14日(水)の「灰の水曜日」と呼ばれる日から始まり、日曜日を除いて3月31日のイースターまで40日間続きます。
 20年ほど前、「受難節」の時期にイスラエルを旅行したことがあります。この時期は世界中から多くのクリスチャンがイエスが十字架に架けられたエルサレムのゴルゴダの丘に向かって手に十字架を持ったり、首に掛けたりして「苦難の道(ヴィア・ドロローサ)」を登っている人を多く見かけました。中には大きな木の十字架を担いで坂道を登っている人が何人もいました。文字通り「十字架を背負って」イエスの十字架の苦しみを体験するのです。
 なぜこのような苦しみをしてまで「苦難の道行き」を行うのでしょうか?それはイエスが「わたしのあとに従いたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい」(マルコ福音書8:34)との言葉に従って「自分の十字架を背負う」ことが、イエス・キリストに従う信仰の道だからです。
 その十字架への苦難の歩みの先に復活(イースター)、新しい人生があるのです。禁欲とは言いませんが、自制や克己にトライしてみませんか?新しい人生の景色が見えてくるかもしれません。
2024年2月


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